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上海は大阪を越えられるか?【中国日記vol.108】

愛・地球博に行って来ました。弁当の全面持ち込み禁止が問題になったことは知っていましたが、全面禁煙になっていることまでは知りませんでした。このような人権に関わる問題が先進国日本で充分配慮されていないことに驚きました。

 「中国にも言論の自由はあります」。その程度はともかく、こんな言葉を若者の口から聞ける程、中国の沿海諸都市は豊かになりました。高度経済成長を続ける中国には自信と活力があります。「明天更美麗」(明日はもっと素晴らしい)と多くの人が信じています。一方で、内陸に入ると衣食住さえ事欠く人々も多く、最も基礎的な人権である生存権の保障に頭を悩ませている現実もあります。上海万博が開催される5年後の中国はどこまで発展しているでしょう。万博は経済成長の総決算、少なくとも「愛知」は越えて欲しいものです。

1.弁当持ち込み禁止

 民間の企業が運営しているテーマパークであれば、食べ物の持ち込みを禁止したり、飲酒を禁止したり、禁煙にすることも自由です。ところが万国博覧会という国家が関与する行事に、自宅で作った弁当の持ち込みまで禁止してよいはずはありません。外食をしない家庭もあります。食物アレルギーを持つ人もいます。イスラム教徒は豚を食べませんが、会場に特別な食堂があるのかどうか。人には何を食べるのか決定する権利があります。開催から一ヶ月も経たない内に、持ち込みが許されることになりました。

2.「分かってお見えになるんでしょ!」

 壁際でタバコを吸っていると、地元出身と思われる中年の男が怖い顔で近づいてきました。私は入場してから会場が全面禁煙になっていることを知りました。この男、「警備員を呼びますよ」と喧嘩腰です。

 警備員に対して私は、「会場を禁煙にするのであれば、喫煙場所を設置する義務があります。喫煙者に対する配慮が足りません。これは抗議行動です」と言いました。警備員によると喫煙場所があるそうですが場所を明示できません。後で判ったのですが、男にからまれた壁沿いに5メートル行った裏手に喫煙場所がありました。案内板どころか表示がないのでみつけることができなかったのです。

 喫煙者は、私のように人混みから離れた場所で吸い、吸い殻をゴミ箱に捨てに行くか、携帯灰皿を使っています。日本では3割もの人が喫煙者で、しかも高額のタバコ税を国と地方に払っています。タバコの製造や販売で生活の糧を得ている人も居ます。万博は日本国が関与する以上、タバコを吸う権利を奪うことは許されません。

3.「愛知」のハードル

 展示の目玉、冷凍マンモスですが、マンモスはどういう動物で、なぜ絶滅したのか、なぜシベリアに凍った状態で埋もれたのか、そういう背景の説明や展示がなく、「見た」という感想しか残りませんでした。

 1970年、大阪万博の時は目玉になった米国館ですが、今回は米国イデオロギーを宣伝する20分のビデオが主で、展示にはほとんど力が入っていません。競う相手が居ないのですから当然かもしれません。カナダ館と英国館は、行列が好きな方にのみお薦めします。

 待たずに入れるネパール館、焼きたてのナンを持って二階に上がります。素朴なテーブルと椅子、カーペットなど、ここにあるほとんどの物はネパールから運んだのでしょう。真っ赤な香辛料にまみれたタンドリーチキンを手でほぐして、赤い脂でベトベトになった指でナンをちぎり、挟んで食べます。中央の仏塔の屋根には埃が貯まり、壁を覆うシートは皺だらけです。一階を見下ろすと薄暗い中に売店で売る明るい布が浮かび上がります。まるでバザールのようです。全てが調和して現地に居る錯覚を起こさせてくれます。因みにネパール館の外側後方には喫煙場所までありました。穴場です。 

4.大阪万博

 中国は、2010年には日本に次ぐ世界第三位の経済大国になる可能性があります。高度成長のさ中に万博が開催される点で、1970年の日本に似た状況です。当時、日本の経済規模は世界有数となり、日本人の誰もが「明日はもっと素晴らしい」と信じていました。米ソの宇宙開発競争があり、万博では月の石、米ソの宇宙船が展示の目玉になりました。皆が明るい未来への期待を胸に、感動を持ち帰りました。

5.上海万博

 五年後に迫った上海万博ですが、大阪万博のような感動を中国の人々に与えることができるでしょうか。喫煙場所は設けられるか、弁当の持ち込みが許されるか、こんな細々したことにまで配慮するレベルに達しているでしょうか。中国に残された時間は多くありません。愛煙家の一人として、中国の成長を祈るばかりです。

写真1:リニモ先頭車両から
写真2:愛知万博会場

この号終わり