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酒造りの始まり【酒蔵便りvol.48】

<酒蔵の様子>

菌糸の伸び始めた麹 稲刈りが終わると、いよいよ今シーズンの酒造りの始まりです。11月12日、最初の米を蒸しました。一本目の仕込みは本醸造。その麹米です。
 夏の猛暑の影響か、今年も朝の冷え込みは緩やかです。米を蒸す甑(こしき)から湯気と共に香ばしい米の香りが立ちのぼります。約一時間で蒸し上がりです。

 蒸し上がった米は、畳一畳くらいの大きさの簡易放冷機に厚さ10センチほどに盛り、ファンで外気を吸い込んで米を冷まします。30℃くらいになったところで種付けです。
 種付けとは、麹カビの胞子を振りかけることです。むらができないように混ぜ合わせ、再度振りかけて混ぜ合わせ、麹室に運び込みます。麹室の中は、酒造りの期間はずっと麹造りに適した30℃に保たれています。
 麹室では、床(とこ)と呼ばれる畳4畳くらいの箱の中に拡げて置きます。蒸し上がった米が全部種付けの作業を終わると全体を布で包んで蓋をします。

 夕方、床の中の米をほぐす作業をします。米の固まりに両手をつき、上半身の体重をかけて床(とこ)の床(ゆか)に押さえ込むようにしますと米は粘りながらもほぐれていきます。4人で約一時間の作業です。上半身裸で行いますが、全身が汗でびっしょりになります。

製麹機に盛り込まれた麹米 二日目の朝、床の米を製麹機(せいきくき)に移す作業をします。米の表面には麹カビの菌糸が伸び始め、うるんだように少し白っぽくなっています。少し甘い麹の香りもします。
 切り返し機と呼ばれる機械に床の米を入れて、一粒一粒ばらばらにします。それを布を敷いた棚に薄盛りにします。棚は左右に各5段、合計10枚です。麹は菌糸が成長するにつれ熱を出します。固まりのまま放置しますと中は熱く外側はあまり温度が上がらず乾燥するというように均質に管理ができませんので、最初から薄く盛ってしまうのです。
 製麹機の扉を閉めます。製麹機は内部の温度や湿度を時間経過毎に自由に管理できる箱のようなものと考えて下さい。麹の状況に合わせて環境を設定し、翌日まで思い通りに麹を作り上げるのです。
 夕方、麹の生育状況を目と鼻で確かめ、最後の環境設定を行います。昼間の管理により夕方になれば翌朝にかけての温度の上昇カーブが読めますので、最高温度と除湿タイミングを決めることができるのです。

 三日目の朝、麹は甘い栗のような香りを出しています。麹のできあがりです。麹は手早く麹室から出され、さなと呼ばれる棚に布を敷き、その上に拡げて冷まします。翌日以降仕込みに使う時には、表面も適度に乾いて良い状態になっています。

写真上:菌糸の伸び始めた麹
写真下:製麹機に盛り込まれた麹米

尚、<今月のテーマ> は、筆者の都合により休ませていただきます。

2008年11月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人