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「80後」世代【中国日記vol.151】

 「80後」とは、1980年以降に生まれた若い世代を指す言葉です。もう少し厳密に言えば、改革開放経済によって豊かになった都市部に住む夫婦の間に生まれた子どもです。日本でも「今の若い者は」といった言葉は伝統的に使われていますが、この「80後」には中国ならではの特殊な事情も見えてきます。

1.小皇帝

 「80後」世代は、少し前まで小皇帝と呼ばれていました。1979年に中国は一人っ子政策を導入し、夫婦間に生まれる子どもの数を一人に制限しました。生まれた子供は、両親、そして父方の祖父母、母方の祖父母の6人に甘やかされて育ちます。そんな世代が社会に出始め、それ以前の世代から違和感をもって「80後世代は」と言われ始めたのです。

 小皇帝は、改革開放経済の進展と共に成長してきました。社会主義経済体制で物のない時代に暮らした両親やそれ以前の世代は、物で子どもの関心を引こうと考えがちです。6人が各々物を与えますと、子どもは欲しい物が欲しい時に欲しいだけもらえる物質飽和状態で育ちます。両親がよほどしっかりしていない限り子どもに忍耐の心は育ちません。

2.高等教育

 改革開放経済以降、中国は大学教育の大衆化を進めましたので、「80後」世代は概ね選ばなければどこかの大学に入れます。大学に進学できるのが一握りのエリートだったそれ以前の世代は「大学卒」というものに憧れを持ち一目置いていますので、「80後」世代はプライドが高くなりがちです。そのプライドが災いし、就職活動も難航しています。

3.結婚と離婚

結婚会場商談会の広告 「80後」世代の最年長者は現在28歳。結婚適齢期を迎えています。費用は両親丸抱えの派手な結婚式が当世流ですが、結婚してもすぐに別れる傾向が報道されています。中国の都市部の離婚の内、結婚後一年未満の比率が7%超、三年未満なら2割とか、その多くが「80後」カップルなのだそうです。

 近代国家では、戸籍は夫婦単位で作成されます。夫婦を単位とする家庭は人類再生産の場として社会の核たる存在です。結婚して家庭を持つことは一人前の社会人として認められる大きな要素でもあります。

 結婚は互いに違う環境で育った別の人格が一緒に生活をするのですから、互いに相手を思いやり、補い合い、助け合わなければ家庭を維持できません。忍耐力、協調性、献身が求められます。「自由でいたい」なら結婚する必要はありません。

4.子離れできない両親

 中国では親族同士が互いの家庭を訪問することに遠慮がありません。とりわけ親が子ども夫婦の家庭に対して抱く距離感は近く、「我が家の子ども部屋」感覚です。勝手に上がりこんでくつろいだり、掃除したりは当たり前。時には、カーテンやテーブルクロスを好みのものに取り替えたりもします。又、日常的に子ども夫婦を自宅に呼んで食事をさせます。子どもの独立心は育ちようもありません。

5.傾向と対策

 「80後」問題は、急に豊かになった中国社会が次代を担う世代の育て方をつかみ切れない内に必然的に生み出されたものと言えます。「我慢」を教えるために子どもにむやみに物を与えないこと、「独立心」を持たせるために親子の距離を適度に取ること、「思いやり」を身につけさせるために他人を尊重すること、それによって自分も尊重されることを理解させるなど、家庭教育の果たす役割を一つ一つ確認して実践して行く必要があります。

 私の頭の中に春秋時代斉国の名宰相管仲の言葉が浮かびました。「衣食足りて礼節を知る」。「物質に恵まれたら次は精神」と読み替えることができるでしょう。その百五十年後、孔子は「仁」を説きました。今から二千五百年前のことです。

この号終わり

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