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火入れ【酒蔵便りvol.54】

<今月のテーマ> 火入れ

 酒蔵では、片付けの作業が進んでいます。その傍らで、火入れ作業が行われています。

 火入れとは、酒を60℃に加熱しタンクに密封する作業のことです。3月までに搾られた新酒は、約1ヶ月で澱が下がります。その上澄みを更に濾過してから火入れを始めます。

 酒にはアルコールが含まれますので、100℃にせずとも60℃を一定時間保つことで酒を腐らせる乳酸菌など全ての雑菌が死に絶えます。これを低温殺菌と言います。火入れは雑菌を殺すのみならず糖化酵素も死活させ、貯蔵に適した状態にします。この低温殺菌の原理は、パスツールが発見するよりも前の江戸時代に、酒造り職人の経験から生み出されたというのですから驚きです。

湯気を立てる火入れ桶 木桶は、断熱効果が高いので湯が冷めにくく効率的です。弊社では今も火入れに木の桶を使用します。木の桶の中に蛇管と呼ばれる管を入れます。木の桶には湯を張り、蒸気を吹き込んで温度を上げます。酒は蛇管を通る間に60度に加熱され、ホースでタンクに送り込まれます。温度が低いと殺菌効果がなく、高いと酒の質が傷みます。温度計をにらみながら吹き込む蒸気量を調節し、或いは流れる酒の速度と量を調節します。

 火入れが終わると、そのタンクは密封されます。酒は暗く涼しい酒蔵の中でゆっくりと熟成し、円やかになります。秋を迎えると幾つかのタンクの酒とブレンドされ、出荷されて行きます。

写真:湯気を立てる火入れ桶

2009年5月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人