屋根瓦の葺き替え【酒蔵便りvol.81】

<蔵の様子>

穂が出そろった山田錦の田 台風12号の被害を受けられた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 今回の台風は巨大で雨域が広く、9月1日から5日までの長雨になりました。奈良盆地は、台風が西側を通過する場合は紀伊山地で雨を降らせますので、風が強かったことを除けば降水量が一時的に多くても小雨になったりやんだり。台風が来ていることを知らなければ「秋の長雨」のようでした。お陰様で無事にやり過ごすことができました。
 山田錦は、例年通り8月末から穂が一斉に伸びました。長雨が終わると既に穂は出そろい、順調な生育を見せています。

 酒蔵では、10月の酒造り開始に向けて準備が始まりました。酒造りの計画作り、米の発注、設備の準備など、気ぜわしくなって来ました。日本国内の清酒需要は年々低下していますが、今年も酒造りができることに感謝です。

<今月の話題> 屋根瓦の葺き替え

葺き替えが進む麹室の屋根 酒蔵の屋根の葺き替えをしています。以前は蔵人が寝泊まりしていた部屋を今は従業員の更衣室として使っていますが、その上と麹室(こうじむろ)の上です。8月29日から古瓦を外してブルーシートを被せたところに台風がやってきました。風にあおられてできたシートの隙間に雨が入り込み、少し雨漏りがありましたが、屋根屋さんが急いで駆けつけて下さり、最小限の被害で収まりました。有り難いことです。

 日本に産業革命が起き、物資が豊かになるまでは瓦葺きは高価でした。中谷家の母屋は江戸時代の終わりに建てられた大和棟(やまとむね)と呼ばれる建物ですが、主たる部分は萱(かや)葺きです。現在は上に銅(アカ)の薄板を張って葺き替えの手間を省いています。それ以外の部分は基本的に瓦葺きです。
 瓦の寿命は約80年。創業時の酒蔵と米蔵は大正に一度葺き替えましたので二度目。門、門屋、座敷など明治から大正に建てられた部分は初回の葺き替え時期を平成に迎えました。ここ数年で順次葺き替えを行っているのですが、今年行う部分を終えれば江戸時代の酒蔵を除いて終了です。

今井町のパンフレット 9月4日、奈良盆地南部の橿原市今井町の街並み見学に行きました。今井町は、称念寺を中心に造られた中世の自治都市です。江戸時代の古い街並みが残り、観光名所となっています。
 行政の協力もあり解体修理、補修、屋根瓦の葺き替えが行われていますが、瓦に苔(こけ)が生えたままの建物も目立ちました。瓦は寿命が来ると水が浸透し、苔が生えると共に、雨漏りが始まり、屋根板、そして構造部分の木が腐って行きます。町の中心となった称念寺も解体修理の準備中でした。本堂に近づいて見ますと、瓦寿命はとっくに超えて放置されていたらしく、雨漏りで屋根の勾配さえゆがんでおり、建物もゆがみが目立ちました。昔の瓦葺きの建物は、木の骨組み部分がしっかりしていますので、瓦さえ葺き替えれば長年持つはずです。ここまで放置される程、今井町がさびれていたのかと思うと、寂しい気がしました。

この号終わり

写真上:穂が出そろった山田錦の田
写真中:葺き替えが進む麹室の屋根
写真下:今井町のパンフレット

2011年9月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人