新年を迎えて【酒蔵便りvol.85】

<蔵の様子>

 元日は、薄日の射す穏やかな朝を迎えることができました。
 正月三が日は酒造りも休みです。東大寺に初詣に出かけました。近くの駐車場はほぼ満車。少し離れた駐車場に車を停め、飛火野(とびひの)を右手に、浮見堂を左手に見ながら南大門に向かって歩きました。途中、春日大社の参道を横切りますが、参詣客でぎっしりです。南大門をくぐって、大仏殿。何度見てもその巨大さに畏敬の念が湧く大仏様に、今年の平安を祈りました。

<今月の話題> 新年を迎えて

 昨年は、東日本大震災が引き起こした福島原子力発電所の事故が日本酒の輸出に大きな影響を与えました。
 海外で日本酒は、ほぼ日本料理店だけで消費されます。日本料理といえば魚料理。福島原発から流れ出た放射能が海水を汚染し、魚も汚染されたというイメージが増幅し、日本料理店から客足が遠のきました。日本酒は国内での需要低迷を補う為に、輸出に活路を見いだしています。海外での消費減は業界にとって深刻な問題になります。
 中国でも香港では日本料理店が壊滅するとまで言われました。香港に隣接する広東省を筆頭に、南から北にまで影響が拡がりました。徐々に客足は戻り、ようやく8月に平常に復帰しました。
 ところが中国では影響が長引きました。日本酒のみならず日本の食品の輸入を制限したのです。日本料理店は、酒類はもとより、酢などの調味料も入手できず、大変困った事態に至りました。ようやく12月から制限が実質上解除され、平常に戻りつつあります。弊社製品の輸出も再開です。

 良いこともありました。震災直後から出荷量に影響を受けましたが、8月に日本料理店に客足が戻ってから中国産清酒に目がむき、弊社関連会社・天津中谷酒造が製造する清酒を輸入清酒に代わってお取り扱いいただくお店が増えたことです。
 料理店としては、日本産こそ「日本酒」としてこだわっておられたところでも、お客様の声から同社が製造する「朝香」や「極」(きわみ)を望んでおられる方が多いことを知っていただいたり、それらを置いてみたところお客様の評判が良かったり。中国では日本に比べて米価が低く、米を贅沢に使って質の高い純米酒だけを造ってきましたが、それが苦境の中にも良い結果につながったものと喜んでいます。

 さて今年。「華やかさと壮大さが辰の年の特徴」とか。皆様の飛躍とご健康をお祈り申し上げます。日本酒業界にとっても良き年になるように祈っています。

この号終わり

写真1:中谷酒造正門の正月飾りと新しい杉玉
写真2:中谷酒造店の鏡餅

2012年1月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人