お大師さんの春祭りと火入れ【酒蔵便りvol.89】

<蔵の様子>

郡山城址の桜 今年は例年より桜の開花は遅くなりました。郡山城址は桜の名所として知られますが、約千本の桜は毎年見事な花をつけます。今年は4月8日の日曜、朝から深く澄み渡った青空が広がり、二分から五分咲きの桜がとりわけ映えました。

 4月20日、最後のタンクのもろみを搾り終えました。全ての酒を搾り終えることを皆造(かいぞう)と言います。ようやく今シーズンの酒造りに一区切りです。蔵人(くらびと)はもちろん従業員誰もが忙しかったこの半年間を無事に乗り切れたことでホッとしています。米を蒸す作業を終えた甑倒し(こしきだおし)と同様に、酒造りの無事に感謝し、蔵人の慰労を兼ねて祝宴を張ります。

 酒蔵では、酒搾りと並行して火入れが行われています。
 火入れとは、搾り終えた原酒を加熱殺菌してタンクに密封貯蔵する作業のことです。こうすることで酵母菌や乳酸菌、それに雑菌を死滅させ、糖化酵素の活性を失わせ、安定した状態で熟成ができるのです。清酒にはアルコール分が含まれていますので100℃にしなくとも60℃といった比較的低い温度で殺菌ができます。

<今月の話題>

お大師さんの飾り 4月21日はお大師さんの春祭りです。各家が持つ弘法大師の像を門口(かどぐち)に祭ります。
 中谷酒造のある番条町は環濠集落で、その戸数は江戸時代から約百軒足らずで変わりません。ほぼ各家にあたる八十八軒が弘法大師像を持ち、弘法大師ゆかりの寺で構成される四国八十八個所になぞらえて、一から八十八までそれぞれ札所の番号が振られています。この日、番条の八十八個所を廻れば、同様の御利益があるという訳です。中谷家は三十番です。このような祭りは、江戸時代の終わり頃各地に流行したと聞きますが、今日まで続くのは番条などごく少数です。
 朝からパラパラとお参りの人が訪れます。二十人ほどの団体もあります。ご近所のみならず大阪方面からも来られます。お供えしている蓬(よもぎ)団子や餅は持ち帰ることができますので、戦後の食糧難の時にはもっと沢山の人が訪れたと聞きます。今年はNHKの取材カメラが入ったり、上田大和郡山市長一行がお見えになったり、一日中賑やかでした。

この号終わり

写真1:郡山城址の桜
写真2:お大師さんの飾り

2012年5月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人