甑倒し、45年ぶりのモデラー【酒蔵便りvol.171】

<酒蔵の様子>

 原料、即ち蒸米と麹、水を発酵タンクに投入し、撹拌する作業を仕込(しこみ)と言います。2月下旬を以て今シーズンの仕込作業を終了しました。
 甑(こしき)と呼ばれる米を蒸す装置も片付けに入ります。昔は釜の上に甑を据えて、それを取り外せましたので、仕込作業終了のことを甑倒し(こしきだおし)と言い、その夜は慰労の宴席が開かれたものでした。
 残るは発酵もろみの管理。そして発酵が終わると順次圧搾していきます。麹室の片付けと沢山の布の洗浄も始まりました。
 中谷家の梅は遅咲きですが、今月に入って咲き始め、既に満開です。春を実感しています。

<45年ぶりのモデラー>

 昨年夏、江戸時代に建てられた白米蔵の片付けをしました。使わなくなった資材、木材片、書物に混じって私がかつて作ったプラモデルが出てきました。ほとんどは私が知らない内に捨てられていたのですが、12台の車両と31人の兵士、それに未組み立ての車両3セットほどと煉瓦、障害物、標識、土嚢などの部品が残っていました。
 タミヤ模型のHPの発売時期から見て、高校1年生の頃に作ったようです。よく見ると精密で人形の眉と目、唇も色が塗られています。眺めている内に市販の展示ケースに入れて飾ることを思いつきました。2月から今月にかけて、車両と兵を組み合わせて7つのシーンを作り上げました。今後7回に分けて紹介します。

 

 初回は、「反撃」。1943年秋の欧州東部戦線における市街戦です。車両はドイツ五号戦車パンサーA型。車両と兵はそのまま使用。展示にあたって手を加えた点は次の通り。

  • 街灯の作成。部品が残っていたので光沢のある濃緑を重ね塗りして鋳造品の質感を出しました。電球は、手芸用のビーズを使用。
  • 石畳の路面。台所用の抗菌シートにつや消しの黒を吹き付け、軍艦色を筆でなすりつけました。
  • 煉瓦塀の作成。部品を組み立て、漆喰感が出るようにつや消し白を先に塗って目地を埋め、上から赤茶けたブロック色をこすりつけました。看板は、部品の箱に印刷されたものを切り取り貼り付けました。ドイツ語の意味は「重要!補給路。花嫁を扱うように大切に」だそうです。
  • ソ連軍の土嚢陣地の設置。土嚢部品を積み上げ、放棄された軽機関銃を置きました。
  • キャタビラーの接地面に薄く溶いた銀色を塗り、石畳でこすれて鉄がむき出しになっている雰囲気を作りました。

 合わせて1日ほどの作業ですが、時間の合間に3日かけて楽しめました。
 考えて見れば第二次世界大戦終結からもうすぐ74年。戦場で斃れた兵士はもとより生き延びた兵士も鬼籍に入っておられます。模型とは言え、ちゃんとした形で残すことがそれらの人々の供養になることに思い当たりました。合掌。

写真1:布の洗浄
写真2:展示ケース
写真3:反撃(前から撮影)
写真4:反撃(後ろから撮影)

2019年3月
 中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人