悩ましい春、情景新作三の一【酒蔵便りvol.183】

<酒蔵の様子>

 今期は醸造量を減らしていますので酒造りは最後のもろみ圧搾を残すのみ。作業の中心は片付けと瓶詰に移っています。
 玄関前の梅が見ごろ。庭の片隅の沈丁花も満開で、甘い香りが漂います。春爛漫とは言え、今年はCOVID19に悩まされる想定外の展開です。
 日本ではほとんど報道されませんが、中国では以前のSARSの経験を生かして徹底した対応が行われました。蔓延した湖北省を封鎖し、それ以外の地域での流行を軽微に収めました。その方法は、春節休暇を一週間延長して都合二週間都市間の人の移動を止め、都市内でも不要不急の外出を自粛させ、料飲店での飲食を禁じました。そして休み明けの2月10日から企業活動を再開することができました。湖北省でも流行は終息に向かいつつあります。
 日本では疫病蔓延に向けた検査体制が整っておらず感染者を検知できず、結果として少ない感染者数で国民に安心感を広めてしまいました。今月初旬の段階でも通勤ラッシュ解消を徹底させず、混雑した料飲店での飲食を放置し、学校の休校も今月に入ってからです。政府は感染拡大を止めることは不可能で、ただ感染のピークを遅らせ山を低くすることしかできないと発表していますが、私はまだ感染拡大を止めることが可能と信じます。中国の経験に学んで人の接触を減らし短期間に終息させることが経済の為にも良いと思います。政府のきっぱりした対応を望みます。

<模型で作る情景>

 完成した形で発見された車両は全て紹介しましたが、未完成で発見された米国M4戦車で一つ、英国の軽車両と大砲で一つ、手付かずで発見された日本の戦車で一つ、計3つの情景に仕上げました。今月から毎月一つずつ、三回にわたって紹介します。
 最初は、米国のM4A1中戦車。これだけは田宮模型製ではなくイタリアのイタラエリ社製です。車体下部のみ組み立てを終え、全体の基本色塗装をして放置されていました。M4戦車は第二次世界大戦の米軍の主力戦車でコレクション必須アイテムですが、1976年当時田宮製品には決定版がなく、やむなくイタラエリを買ったことを思い出しました。昨年の夏、造り酒屋にとって時間に余裕がある時期。部品はそろっていますし失敗しても構わないと割り切って完成させることにしました。
 イタラエリ製品は田宮よりも精密で細かい部品が多く、還暦を迎えた老体には困難が伴いました。指先の感覚が若い頃のようには行きません。細かい部品を手で持つと落としてしまったり、ピンセットを使っても手が微妙に震えたりします。拡大鏡を使いながら何とか仕上げました。汚し塗装は焦げ茶の土色をシンナーで薄く溶いて塗りました。その上に粉雪のテクスチャー塗料を載せて完了。人形は、発見されたものの内、使えそうなものを三体選びました。これら兵隊にも粉雪の塗料をまぶしてやりました。
 「迎撃」。1944年12月、フランス東部アルデンヌの森。同年6月、北仏ノルマンディー海岸に史上最大の上陸作戦を成功させた連合軍は、ベルリンを目指して進撃を続けます。制空権を失ったドイツは、雪や曇天が多く航空機からの攻撃を避けられる12月に大規模な反撃を行いました。米軍を中心とする連合軍は攻撃に耐え、天候が回復するとドイツ軍を押し返します。  

 展示にあたって手を加えた点は次の通り。

  • ジャンパーのポケットに左手を突っ込んでいる下士官。軍人はポケット内の物の出し入れ以外手を入れることを禁じられています。田宮模型の企画者はそれを知らなかったようで、この兵士の使い道はないところですが、極度の寒さが襲った12月のアルデンヌなら凍傷との戦い上、ポケットに手を入れていても問題ないと考え起用しました。銃を持つ右手は手袋を付けているように濃緑で塗りました。他の二体の兵士も同様に手袋の色を塗りました。三体とも銃の担い紐を紙で作りました。
  • 真ん中で立ち止まった兵士は、上半身のみオリジナルで、下半身は別の人形から取り、接合面を適宜削って合わせました。
  • 地面は、発泡スチロールで段差を付け、雪のテクスチャー塗料を塗った上に粉雪塗料を散らしました。
  • ツェンダップKS750(ドイツの軍用大型バイク)がみつかりましたので、雪に半ば埋もれた形で放置車両に使いました。

 夏に冬の情景を作るのは違和感がありました。齢に負けず何とか格好を付けることができホッとしています。

写真1:庭の梅(3月1日撮影)
写真2:満開の沈丁花(3月1日撮影)
写真3:迎撃(右斜め後ろから撮影)
写真4:迎撃(左斜め後ろから撮影)
写真5:迎撃(横から撮影)
写真6:迎撃(前から撮影)
写真5:補給(斜め前から撮影)

2020年3月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人