VOL.13 深圳(しんせん)のタクシー

投稿日:1997年5月31日

VO深圳(しんせん)のタクシー

 北京空港では白タクを含め、正規の乗り場以外で客を拾うタクシーが多く、到着ゲートから出るなり、あやしげな日本語で運転手が近づいてきます。決してそれに乗ってはいけません。

 法外な料金を請求されるのはまだましなほうで、目的地に着く前に身ぐるみ剥がれて「再見!」ということもあるようです。

 その点、上海空港は安全です。タクシー乗り場には長い行列ができるかわりに、係員がついておりナンバーと行き先を控えます。ややこしい客引きも少ないようです。

 今年に入って香港の向かいに位置する経済特区深圳(しんせん)に行ってきました。所変われば事情も一変、今回はこの報告です。会話は全て北京語で行っていますが、例によって関西弁に訳して迫力を出してみました。

1. タクシーを拾う

 到着ゲートを出ると、案の定タクシーの客引きが寄ってきます。無視して真っ直ぐ正規の乗り場に行きました。一台待つだけで直ぐに乗ることができました。走り始めてハッと気が付くとメーターを倒していません。

 メーターで走れと言うと、「なんぼ払う?」と返してきます。これでは白タク以下です。白タクは乗る前に価格交渉が終わっているだけ安心とも言えます。押し問答の末、やっとの事でメーターを倒してくれました。

 行列なしに乗れた訳がわかったような気がしました。

2. 高速道路

 今度は、高速道路を走るか、ときいてきます。一体料金は幾らか、時間はどれだけ短縮できるのかと尋ねました。はっきりした答えは返ってきません。

 その間にも分岐点が近づいてきます。クルマを路肩に停めろと怒鳴りながら、やっと20元(約280円)の料金で10分早く着くらしいことが解りました。

 それならと下の道を行くことにしました。

3. メーター

 基本料金が過ぎると、10秒やそこらでメーターが上がっていきます。さては細工をしているのでは、と思い、「ちょっとメーターが早いんやないの?」と言ってみました。

 「そんなこと知らんがな。だいたいお前がメーターで走れて言うたんやないか。」と強気です。

 夕暮れの薄明の中で注意書きを見てみると、250メートル毎に積算と書いてありました。時速60kmなら一分で1km進みます。15秒でメーターが上がる計算です。速度計は約80kmを指しています。メーターは正しいようです。

 ほっと一息、でも彼は内心むかついている様でした。

4. 事故渋滞

 丁度半分ほど走ったところで、全く動かなくなりました。事故渋滞です。

 15分が我慢の限界でした。迂回しようと縁石を乗り越えて工業地区の中へ入っていきました。他のクルマも続々と続きます。あっと言う間に工業地区の裏道がクルマで埋まってしまい、身動きがとれなくなりました。

 幸運にも建設中の道路に入り込み、何とか抜け出る事ができました。でも1時間近いロスです。彼は一言も口をききません。かなりストレスが貯まっているようです。

5. 精算

 さて、到着です。メーターは、140元、彼の請求は170元です。

 「メーターで走るて言うたやない。」

 「いいや、もうすぐ春節(旧正月)やから「春運」言うて高なるんや。誰でも知ってるで。」と当然の如く言い放ちます。

 誰かに尋ねてみようにもホテルのロビーまで20メートルはあります。そして私の荷物は全部タクシーのトランクの中にあります。弱い立場にあるのは私です。払う事にしました。でも少し値切って結局160元を払いました。

 彼の捨てぜりふは、「高速道路を走らん奴は初めてや。二時間もかかったやないか。」

 高速道路を走らない選択肢をくれたのは彼なのに、渋滞したリスクをどうして客が負うのでしょう。おまけに、もらった領収書を明るいところで見てみると「70元」でした。

6. 乗車拒否

 その日は広州に移動する日で、荷物があるのでホテルから1km離れた駅までタクシーが必要です。駅前は混むからか、行ってくれるクルマがみつかりません。或いは、外人と見てか100元などという法外な対価を要求します。

 10台目で行ってくれるタクシーがみつかりました。おまけにこの運転手は、列車で広州に行くのは危険だからと、広州ナンバーのタクシーまで探してくれました。広州ナンバーのタクシーは、帰りは空で戻る事が多いので、少しのお金でも行ってくれるというのです。

 結局は、外人と見ると値段をふっかけてきたので、列車で行くことにしましたが、この運転手の厚意には感激しました。

 彼には、メーターで10元のところ、10元多く20元やりました。この10元は、気持ちよく払うことができました。

つづく