VOL.32 また考えときまっさ

投稿日:1999年2月06日

また考えときまっさ

相信 XIANGXIN:信用する。信じる。(小学館「中日辞典」)

「通訳なんて使ってると学校で習ったとおり訳すんだよ。こないだも相信(シャンシン)を、あなたを信用します、なんて訳してたけど、経験が物を言う社会では全く意味がないよ。」(ある駐在員の愚痴)

1.最初は「グー」

 新しく日本レストランがオープンしているのを発見し、早速営業訪問しました。ホテル直営で、マネージャーは、若い女性です。彼女は丁寧に席を勧めてお茶を持ってこさせました。

 私は説明を始めました。そのホテルの売店で弊社の清酒を当初より扱っていただいていること、現在中国中の日本料理店に普及していること等を手短かに説明しました。

 彼女は、にこやかに私の話を聞いたあと、
「わかりました。連絡先を残してください。要望があれば必ず連絡します。」

2.誤解

 これを聞いて普通の日本人なら商談は成功と信じて、「ありがとう。宜しくお願いします。」などと言って、笑顔で握手して「再見!」。会社には商談の感触良しと報告するでしょう。

 ところが、全くの勘違いです。

3.正解

 よく使われる言い回しに、「有機会、一定再来。」(機会があれば必ず又来ます)があります。ここにも条件節と「必ず」が含まれています。これが重要です。

 則ち、もう機会はありそうもないので来ることは無いが、感謝の気持ちを強調する為に「必ず」をつけているのです。従って、前述の商談では、「注文を出すことはないが、わざわざ日本人の責任者が来てくれてありがとう。」の意味なのです。

4.情況確認

 「このホテルには、日本人がたくさん住んでいるでしょう。この店には来ますか。」

 「ええ、たくさん来ます。」

 「売店では、よく売れています。それなら貴店でも、必ず御客様に喜ばれます。」

 彼女は売店での売れ行きを確かめるまえに、
「ちょっと、飲料部のマネージャーにきいてきます。」そして、しばらくして戻ってきました。

「以前仕入れたけれど、まだ在庫があるといっています。」

 彼女が席を立った隙に同席した弊社の営業マンが教えてくれました。営業に来た2年前には中華レストランしかなくそこに納入したが、店では一切客の前に出さず、在庫は全量引き上げ済みとのことです。

5.じゃんけんポン

 「売れないものは置けません。」彼女も、飲料部のマネージャーも、中国産の清酒を飲む人など居るはずが無いと確信しているようです。私は作戦を変えました。

 「ところで貴店では、どこの銘柄を使っていますか。」

 「わかりません。」

 「あなたは、ひょっとして清酒についての知識がないのではありませんか。」

 「忙しくてよく見ている暇がないんです。」

 「忙しいと言ってもそれがあなたの仕事でしょう。」追いつめました。少し間があって、

 「実は、このポストに就いたばかりなんです。」

6.決着

 「現在は日本料理店がある。再度試して下さい。お客さんも飲みたい酒があれば嬉しいし、酒もすすみます。貴店にも弊社にも利益があります。テーブルテントを店内の目立つ所に置いて、お客さんが欲しいと言えば無償サンプルを差し上げて下さい。そして、直ぐに弊社に発注下さい。これなら売れることを確認した上で注文できます。どこに置いたらいいか、店内を見に行きましょう。」

 私はさっさと先に歩き出します。そして、店に入るなり絶好の場所をみつけました。
「ここにしましょう。」それからおあいそを言って、さようならです。

 アーしんど!

つづく