VOL.69 「日本料理」に馴染む

投稿日:2002年3月11日

「日本料理」に馴染む

 「中国では日本料理の定額料金食べ放題が普及してるんや」

 「えっ!」女房に驚かれて、ごく当たり前に受け取っていたことが、よく考えてみれば尋常ではないことに思い至りました。そう言えば、しゃぶしゃぶや焼き肉、ホテルのヴァイキングでなら見かけますが・・・。

1.食べ放題に燃える

 中国の大都市では、日本料理店が乱立気味で、競争が加熱しています。そんな背景の中で、定額食べ放題が始まりました。

 「食べ放題?、そんなんは日本料理と言えへんやろ」器や盛り付け、季節感、出すタイミングまで演出する「心」を教え込まれてきた板場育ちの人には思いもよらない発想です。

 食べ放題の店は、客の回転が勝負です。とんでもない低価格で客を集めますから中国の人々で一杯です。そこに飲み放題を加える店まで増えてきました。

 テーブルの上には刺身の皿、原価の関係でサーモンが主体です。天麩羅の大盛り、焼き鳥の皿、握り寿司が所狭しと並びます。そして徳利の林。乾杯、また乾杯・・・。

3.中国の宴席では

 上座を勧めあい、席が落ち着くとメニューの譲り合い、結局ホスト側が料理を注文します。テーブルの上に数種類の冷菜と、白酒と呼ばれる強烈な臭いの蒸留酒がボトル丸ごと置かれたところで最初の乾杯です。

 中国式乾杯は飲み終えたら杯を逆さまにしてかざし、飲み干したことを相手に示さねばなりません。一人で勝手に飲んでもいけません。必ず誰かと道連れです。グラスは小さくてもアルコール度数が高いので直ぐに酒がまわります。

 やがて次々に暖かい料理が運ばれ、その間せっせと乾杯が続きます。歓迎の度合いが高いほど乾杯の頻度が上がります。あっという間に酒瓶が空き、次のボトルが運ばれます。ホストが杯を持つと全員が唱和して杯を干し、ゲストがお返しの唱和でまた乾杯。みんなもう出来上がって、隣りどおしでも乾杯しています。

 こうなると食べるのは二の次です。構わず次々と料理が運ばれ、皿の上に重ねて置かれます。果てしなく続く乾杯を女性陣は醒めた目で見ています。もっとも中には女傑もいます。

 最後に、グラスに残った酒を干してお開きになります。テーブルの上には大量の料理が残り、前後不覚になった乾杯の犠牲者を運び出せば終わりです。

3.さて

 中国では食べきれない程の料理と、誰もが酔っぱらいになってしまうほどの酒が振る舞われる事が重要です。そんなことから、日本料理店の「食べ放題・飲み放題」を、異国風の料理と酒を利用した中国式宴会の延長と捉える人もいます。

 一方で、「数年前を思い出して下さい。これほど多くの中国人が日本料理、特に生の魚と清酒に馴染んでいるのは、驚くべき変化です。この中から必ず、本来の一人分ずつ器に盛られる、見た目と味を楽しむ、季節感と微妙な素材の味を生かした料理が解る人が出てきます。中国の変化は早いですよ。」とおっしゃる方もいます。

 確かに「食べ放題日本食」に中国の人々はハマッています。中国で進む食の国際化は中国流に消化された独自の展開を見せています。で、この先は・・・、楽しみです。

つづく