皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。
連載の二十七回目。家飲みの楽しみを分かち合いましょう。
オリンピックの余韻さめやらぬ間に盆の行事が始まりました。記録更新の猛暑の中、今年は筆者の父の初盆でもあり親族が集まり賑やかな盆でした。
13日夕刻、おしょらいさん(御招霊)を迎えに行きます。墓地の東側の橋のたもとで線香に火を付け仏間まで。その煙におしょらいさんは乗って帰ってこられます。15日夕刻に墓地に送るまで接待して家で過ごしてもらいます。伝統的な決まりものの食事をお供えし、我々も同じものを頂きます。おしょらいさんには供えない刺鯖(さしさば。鯖を開いて二尾を竹串に刺した塩干物)もいただきます。これは親族が集まり酒も酌み交わしますので酒のアテとして重要な役割を果たします。今回は盆の一夜の晩餐です。
主役の酒
清酒 大和郡山 中谷 (2024BY1本目の酒)
醸造年度は7月1日に始まります。令和6醸造年度最初にできたこの酒を合わすことにしました。夏に醸した酒ですが、発酵温度管理はぬかりなく、いつも通りの軽やかでキレの良い酒に仕上がっています。
アテ
煮物と焼塩鯖
煮物の具は、厚揚に干瓢(かんぴょう)とゼンマイ、カボチャです。精進料理であれば削り節の出汁は使うべきではないのですが、味を重視して削り節と昆布で濃い目の出汁を取り、醤油と砂糖を加えて煮ます。
カボチャは出汁を使わず別に煮ます。水を張って55度まで温度を上げた後、30分以上放置し、その間に組織内の澱粉を糖化させます。これにより甘さが増し、煮崩れも防げます。その後調味料を加えて煮ます。
刺鯖は最近見かけなくなりましたので、代わりに塩鯖を使います。既に塩をしたものをパックして売っていますのでそれを焼きます。
晩餐
今宵は親族6人がそろって賑やかな晩酌(ばんしゃく)です。
先ずおしょらいさんと無縁仏にお供えをして先に召し上がっていただきます。蓮の葉が膳で柿の葉が皿です。それが終わると我々の夕食です。
生酒で乾杯。口中に爽やかに拡がって、喉を流れ落ちます。一日の猛暑が吹き飛ぶような心地よさ。そしてゼンマイと干瓢。近年は盆にしか食べない食材ですが、懐かしさと共に何かしら心を落ち着かせるような旨味を感じます。そして酒。合う!
厚揚。適度に味が染み、噛むと大豆の風味が拡がりそこに酒。調和しています。そしていよいよ塩鯖。醤油をひとかけして、腹のところから一口。鯖の濃い油に醤油がからまり、甘みを感じます。適度な塩加減が旨みを強めてくれます。そこで酒をグイっと一杯。旨い!。今宵も満足です。
ではまた次回。