VOL.25 常識の嘘

投稿日:1998年6月27日

常識の嘘

1.米は炊いて食べる?

 中国で白い御飯を食べて、「なんでこんなにマズイんや。」と感じた方は少なくないことでしょう。一方で「このチャーハン結構美味しいやん。」

 米の種類のせいでしょうか。私の経験から言えば日本とほぼ同じ種類の米を食べる大連、北京、天津でも同じです。答えは、調理の仕方にありました。実は中国では米は蒸して食べているのです。

 米の文化は、米を蒸す文化、それが日本に伝わって、いつしか炊く文化に変わっていきました。米作りが始まった弥生時代の遺跡からも、こしき (甑:鍋の上に乗せて米を蒸す道具)が出てきます。

 いまでも餅米は蒸していますし、清酒を造る時にも米を蒸しています。麹を作る麹カビは蒸し米に生えても、炊いた米には生えないのです。

2.中国人は働かない?

 働きぶりが、自分に利益となって戻ってくるシステムが十分機能しなかった社会主義の枠組みの中では、悪平等が蔓延し、勤労意欲を削いでしまいました。そんな様子を見て、「中国人は・・・」といった紋切り型の評価が定着したようです。

 労働の質・量が評価され、それに報いるシステムを作ることで、様子はがらりと変わります。その先兵として我々外資企業が役に立っています。

 弊社を訪れた方々は、異口同音に 「皆まじめですな。」、「良くやってくれていいですね。」、「生き生きと働いてますね。」などと言って下さいます。

 実際に会社を経営してみないと見えにくいことでもあり、中国通と呼ばれる人でも結構この事実は新鮮なようです。

3.風呂に入る習慣が無い?

 昔、中国の農民は一生に二回、産湯と死んだときしか風呂に入らないと言われていたそうです。

 今も家庭に風呂は無く、その代わり職場にシャワー室があって、従業員の家族もそれを使っています。最近各家庭にシャワーが普及し始めましたが、まだ湯船がある家はごく少ないようです。

 これを以て、風呂に入る習慣が無いとするのは早とちりです。実は、都市には銭湯があるのです。

 開放経済が始まってまだ日の浅い1986年に北京で銭湯に行ったことがあります。湯が白く濁っていて底が見えません。掛かり湯も無く、そのまま入るので清潔感に乏しいのが難点です。湯上がりにはベッドがあり、そこで横になって休めます。

 たまの楽しみとして来るのでしょう、1時間から2時間、くつろいで帰るようです。日本人の温泉感覚です。私は帰ってからもう一度、きれいな湯で体を洗い流しましたが、とりあえず貴重な体験ができました。

 と、言うわけで、習慣が無いのではなく、「習慣はあるが、頻繁に入る習慣が無い」というのが正解です。

4.日本人は国際人?

 一方、中国人から見た日本人は、礼儀正しいというのが常識のようです。これは彼我間の認識に大差はありません。又、日本の経済規模がそうさせるのでしょう、国際人 (この定義は難しいので、自国以外の異文化との接触に慣れている、くらいの意味で考えて下さい)として見られている模様です。

 先日、名古屋に直行の中国の航空機に乗る機会がありました。出国手続きの時、私の前の日本人が、係官から搭乗券を見せるよう英語で言われた時、比較的流ちょうな中国語で、

 「なぜ日本語で言わないのか、日本人は英語は話せない。」
と言っているのが耳に入りました。

 出国カウンターでの標準語は英語です。日本路線の機内で日本語を要求するならいざしらず、この一言は日本人の国際感覚を疑わせるに十分です。ひょっとしたら、日本語を要求する傲慢な日本人と思われたかもしれません。

 さて、機内に入って「これが国際語!」とばかりに中国語で押し通すフライトアテンダント達を見るにつけ、やはり「日本人って国際人!」と痛感しました。

つづく