VOL.105 世界の中心で愛?を叫ぶ

投稿日:2005年3月23日

世界の中心で愛?を叫ぶ

1.世界の中心

 中国は文字通り世界の中心ですから、中華文明が及んでいない異民族には悪い意味の漢字を充てます。例えば、モンゴルには「蒙古」。「蒙」は愚かとか暗いという意味です。「邪馬台国」の女王「卑弥呼」。「邪」とか「卑」とか、やってくれたものです。

 魏の皇帝はヒミコに銅鏡を贈っています。銅鏡は、九州では弥生時代から副葬されますが、大和では前方後円墳の出現する4世紀からです。

銅鏡の広がりは、九州を起点とする神武の東征を継いだ崇神(すじん)天皇が大和に入ったことと重ねて考えられています。崇神は太陽神・天照大神を伴って来ました。ヒミコの「ヒ」は「日」なのかもしれません。

 崇神の後の垂仁(すいにん)天皇は天照大神を伊勢に移しました。今日、伊勢神宮は日本の皇室にとって最も重要な祭祀の場です。中国の皇帝にとって同様の意味を持つ場所が天壇でした。それは北京の中心線にあり、世界の中心の更に中央と言える場所でした。

 今では公園として一般に公開されていますので、私のような外国人でも皇帝気分を味わえるというものです。

2.天壇公園を行く

 南門を入ると正面に大理石でできた三段の円形ピラミッド・圜丘壇(かんきゅうだん)が見えます。皇帝は冬至の日に最上段中央の丸い石の上に立ちます。天と皇帝を遮るものは何もありません。皇帝は天と対話し、太陽がその勢いを復活することを祈ります。

 お陰様で翌日から徐々に日が伸びていくという寸法です。その脇には、生け贄の牛を焼く炉が復元されています。肉が焼ける香ばしい香りが漂うと、身を清め飲食を絶って儀式に臨んだ皇帝の空腹にはさぞかしこたえたことでしょう。

 公園の北側にあるのが有名な祈年殿、北京の観光ガイドには必ず写真が載っています。皇帝はここで五穀豊穣を祈りました。

3.太陽と五穀豊穣

回音壁に向かう人々

 伊勢神宮には内宮と外宮があります。内宮には天照大神、即ち太陽神を祀ります。その北にある外宮には豊受(とようけ)大神、即ち五穀豊穣の神を祀ります。ちょっと天壇に似ているではありませんか。

 伊勢神宮の始まりは4世紀、雄略天皇が外宮に豊受神を祀ったのが5世紀です。一方、今の天壇ができたのは明の時代といいますから14世紀です。もっと前の王朝ではどうだったのか、興味が湧いてきます。

 因みに中国の5世紀は南北朝時代、倭の五王(讃・珍・済・興・武)は何れも南朝の宋に使者を送っています。この武王が雄略天皇にあたると言われています。

4.愛?を叫ぶ

 皇帝の位牌を置く皇穹宇(こうきゅうう)は円形の壁に囲まれています。回音壁と呼びますが、反射してかなり離れても音が聞こえるそうです。

 観光客は次々に小走りで、10メートル程先に行って、壁に向かって叫んでいます。多くの人が同時にやっていますので、連れの人々に聞き取れるのは直接の声に過ぎません。

 私も「あー」と言ってみますが、一人では空しいものがあります。誰かが大声で叫びました。すると壁全体に反響して木霊しました。「これや!」。大声を出せば一人でも遊べるのです。

 「あー」迫力不足でした。腹に力を入れてやりなおしです。

 「アー!」そばを通った日本人団体観光客の視線を一身に浴びてしまいました。後ろを向いて知らんふりをして、行きすぎるのを待ちます。そろそろいいでしょう。

 「アーッ!」すると、「あーっ」と一瞬遅れて反響が返ってきました。成功です。

 「あ」だけでは面白くないと思案していると良い考えが浮かびました。「い」をつけて叫んでみましょう。

 「アーイー!」

 ちょっと寒いですね。今回はこの辺で、さようなら。

つづく

写真上:天壇公園の入園券(左が祈年殿、中が皇穹宇の門、右が圜丘壇)
写真下:回音壁に向かう人々