VOL.106 <速報>中部国際空港から飛ぶ

投稿日:2005年4月20日

中部国際空港から飛ぶ

 いつもは関西空港ですが、天津直行便の関係で、小牧の名古屋空港を利用することもありました。小牧の免税店は、私愛用のショートピースを置いていません。近畿圏や首都圏ではほとんどの駅で売っていますが、中部圏の駅にはありません。

 ピースの葉は全て米国からの輸入ですから外貨の不足していた戦後の発売当初は極めて高価で、名古屋流「もったいない」、即ち「始末」精神旺盛なこのエリアには広まらなかったようです。そんな訳で名古屋経由で旅立つ時は、中国で吸う分を自宅から持って行かねばなりませんでした。

 さてこの度、常滑沖にできた中部国際空港は規模も拡大し、その素晴らしさをひと目見ようと観光客で連日賑わっているそうです。愛称も「セントレア」。”centre”(中部)に”air”(空)を引っつけただけですが、日本語の表記を「センタレア」から一文字変えてキリスト教の聖人風にしたのがミソです。

 横文字に弱い日本人にとって「関空」や「成田」より格段に海外に近い感じがします。何れにせよ、これで不便ともお別れです。

1.前夜

 息子の前で、「こういう時代がいつか来ると信じてたんや、長生きはするもんや。まさか、ピースを置いてへんということはないやろう。カッ、カッ、カッ!」と高笑いして見せると、「お父さん、ナゴヤのことやから、わからへんでえ」。

 ふと、悪い予感が頭の片隅に浮かんでは消えました。

2.空港へ

 日本の航空会社の上海行きは9時発、朝自宅を出たのでは間に合いません。選択の余地なく午後のコードシェア便ですが、顧客満足度が高くない中国の航空会社です。

 名古屋駅から空港まで28分の名鉄特急は30分間隔、到着時刻によっては京都・名古屋間を新幹線で行くメリットを相殺しています。八木から名古屋までノンストップの近鉄特急アーバンライナーに乗りました。

 名鉄名古屋駅では、有料でも特急に乗りたいと言う私に、駅員が「先に到着します」を連発して急行を勧めます。「始末」精神に違いありません。46分もかかりますので、後の特急より3分だけ早く着きます。

 悪い予感通り、三つ目の駅で酔っぱらいが酒瓶を持って乗り込んできました。「誰かキャップをあけてくれ、飲みてえんだ!」。最初の一声でアルコール臭い息が車内に漂います。

 皆、目を合わさないようにうつむいていると、隣のじいさんが話し相手をしてくれました。じいさんもそうですが、この酔っぱらいは空港見物にやってきたそうです。

 既に妻を亡くした54歳の独り者で、24歳の一人娘が九州に居り、人生哲学は「生きてるだけで儲け物」(NHK朝ドラ「わかば」より)ではなく「生きてるだけで大変つらい」ということも判明しました。

3.大混雑

 レストラン街が出発カウンターの上の階にありますが、空港見物客でごった返し、店にたどり着くのも一苦労。店の前では行列がとぐろを巻いています。

 食べるのをあきらめて警備員に尋ねると、「出発ロビーで空弁(そらべん)を売ってます」。国内線と勘違いしているようです。

4.免税店

 なぜかガラすきの出国手続きを終え、出発ロビーに入ると、正面に酒タバコの免税店がありました。暗く、狭く、そのくせまばらに商品棚が置かれています。ふと、右手を見ると免税化粧品売り場。

 美女のポスター、ピンクを中心とした色使い、明るい照明、有名ブランド各社のブースが華やかに並んでいます。面積は酒タバコの十倍以上あります。この時点で、私の予感はほぼ確信に近づきました。尋ねてみましたが、やはりショートピースはなく、他にタバコを売る店はありません。

5.再び昼食

 国際線出発ロビーで唯一食事を提供する場所には、20席ほどのプラスチックの椅子が並んでいます。お薦めメニューは「今話題のセントレア名物 フォアグラ丼1,500円」。

 味噌文化の中部圏でフォアグラ(人工肥育したアヒルの肝)、味がしつこすぎるような私の先入観はさておき、価格に問題があるように思えます。一番安い食事は、焼きソバの千円。その次は、ラーメンで千二百円です。競争原理が働かない場所での改善は望めません。

 中国の航空会社の機内食を食べる気になれるかどうか自信がないので、米国系コーヒー店でパサパサのサンドイッチを買って食べました。

 出発は20分遅れで到着は30分遅れ。この30分の遅れは致命的です。金曜の夕方は道路混雑のピーク、5時に上海浦東空港を出て市内まで二時間あまり、貴重品になってしまった手持ちのピースを根本まで吸いながら渋滞に耐えました。

6.これから利用される皆さんへ

 交通手段をよく研究しましょう。例えば、空港から津まで湾を横切るフェリー。

 西に向かう者にとっては時間節約になるはずですが、通路を10分行った埠頭の小屋に入り、奥まった所にあるチケット売場のカウンターに立ててある小さな札を見るまで次の船が満席であることは解りません。

 1時間に一本ですから平均で1時間半も待てない場合は、荷物を抱えてトボトボと空港まで戻るはめになります。

 空港の案内カウンターでは、名古屋より西の地理や交通手段についての知識が乏しいらしく、近鉄電車に乗るのに「1時間に1本の四日市行きのバス」を勧めてくれます。

 当然バスは名古屋まで半島を北上してから西に向かって近鉄線と並行して走りますので、名古屋駅行きのバスか名鉄特急に乗るのが正解です。

 又、空港バスのチケットは、買い間違えないよう細心の注意が必要です。バスの運転手も含め、払い戻し方法を知っている人がみあたりません。

 四日市まで券を買ってしまった私は「始末」精神に学んでバスに乗り、4時間近くかかって自宅にたどり着きました。

 とは言え、朝のフライトに間に合うほど近くに住み、名古屋周辺の交通に明るく、駅員や案内係の言葉に惑わされない強い信念を持ち、食事を済ませてから空港に行き、免税化粧品を土産に持って行く、タバコを吸わない人にとっては、セントレアが快適な空港であることに間違いありません。あと、空港観光客さへ減れば・・・。

つづく