VOL.129 繰り返しの罠

投稿日:2007年3月16日

繰り返しの罠

 「ギャグが受けなければ、客が笑うまでしつこく繰り返す」、これが関西のお笑いの鉄則です。「しゃあないなあ」という失笑から、「そこまでやるか!」という高揚した笑いまで持ち上げるところが繰り返しの効果です。

 中国庶民の素朴さに、関西のお笑いの原点を見ました。

大連空港ロビーで

 私が携帯パソコンでEメールを打っていると、隣に座った中国人のおばはんが話しかけてきました。

 「それ、幾らするの」

 中国人は物の価値は価格で計ります。あまり相手にしたくないので、

 「種類によって違います」とボケます。

 「インターネットに接続できるの?」

 おばはんは時間つぶし。しつこく話しかけられ、私は話すのがおっくうです。

 「電話のコネクタがあれば、ここに差し込んだらできますよ」

 「北京と比べて大連はどう?」

 続けざまに質問です。どうもおばはんは、私が外国人であることに気付いていません。

 「北京に比べたら大連がエエでしょう」と、私。

 私は、政治や権力の利権で生きる人が多い北京は好きではありません。おまけに砂漠化と交通渋滞が年々ひどくなっています。ひょっとしておばはんは北京人かもしれません。

 「あなたはどこの人ですか?」

 しつこいおばはんに乗せられて、とうとう私から質問してしまいました。

 「北京人!」 誇りがあるのか、きっぱりした感じです。

 「あなたは?」

 「日本人」

 「見えない!。日本人の女性は綺麗だけど、男は不細工だね。でもないか。高倉健がいるし」と言いながら私の顔をのぞき込みます。

空港に貼られた「標準語を話そう」のポスター

 私が天津に工場があると言うと、

 「天津はいいところ?」

 私が答えを考えていると、

 「だっろーっ、あそこはひどい。おまけに北京ほど建物も建ってないし・・・」

 首都北京が一番と信じているのに大連の方が良いと言われてズタズタにされた北京人の誇りを取り戻そうと、天津に対してストレス爆発です。私は思わず吹き出してしまいました。

 ここで反論すると、北京人が最もライバル意識をむき出しにする上海に飛び火して同じ繰り返しになりそうです。天津で手打ち。メールを打つのをあきらめて話を聞くことにしました。

 ところで最近、NHKの朝ドラ「芋たこなんきん」を見ていたらツチノコの話題が出てきました。作者の田辺聖子役の藤山直美さんが、右手をツチノコに見立てて動きを真似します。

 右から這ってきて顔の前あたりにジャンプ。その時「チー」と言います。「チー」がツチノコの鳴き声です。結構しつこくやっています。

 私も夜、一杯やって調子が出てきたところで真似をしてみました。ジャンプのところで手をさっと持ち上げて「チー」。何度も繰り返すと、卓球の素振りに似ていることに気付きました。

 そう言えば、愛ちゃんもスマッシュの時に似たような声を上げていました。「チー」ではなかったように思います。「グー」でもないし、「パー」でもない。「トー」なら仮面ライダーです。

 もう一杯やれば思い出すかもしれません。そう言えば、ショッカーは「ウィー」、最新のゲーム機も「ウィー」でした。女子ゴルファーにもそういう名前の人がいたような気がします。

 思い出せそうで思い出せないもどかしさにもう一杯。「ウルトラマンさん、電話です」、「ジュワッキ(受話器)!」。「ウルトラマンさん、お歳は?」、「ジュハッチ(十八)」。まだ飲み足りないのかもしれません。もう一杯や!・・・。

つづく

写真上:新しくなった大連空港
写真下:空港に貼られた「標準語を話そう」のポスター