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「餃子」とその仲間達【中国日記vol.142】

 中国産冷凍ギョーザ中毒事件で、にわかに注目が集まった餃子。我々日本人にとって非常に馴染み深いこの食品は、焼いて食べるものと相場が決まっています。ところが本家の中国では茹でて食べる水餃子(すいぎょうざ)なのです。更に日本なら酢と醤油を混合したタレにラー油を垂らすところですが、中国では黒酢だけで食べます。

 「罪を憎んで餃子を憎まず」。今回は餃子を中心にその仲間を紹介しましょう。

1.餃子

冷凍食品の水餃子450g(約20個)で6元(約100円) 「餃」という字は「餃子」を表す専用の字です。「子」は小さい物という意味です。「扇子(せんす)」、「判子(はんこ)」という言葉もありますし、「春になれば すがこもとけて どじょっこだのふなっこだの・・・」という歌の「こ」です。ですから「子」を省略して「水餃」という表記もあります。

 ちょっと中国について学んだ方なら正月に餃子を食べる習慣があることをご存じでしょう。ところが人口の半分以上を占める華中以南にはそのような習慣がありません。餃子は小麦を主食とした北方の食べ物なのです。

 餃子の歴史は古く、紀元前の春秋戦国時代には既にあったとも言います。昔はどうか解りませんが、少なくとも清代以降は形が銀貨(馬蹄銀)に似ているとか、子を授かるという意味の「交子」と音が同じなどと、縁起の良い食べ物とされています。

2.ワンタン

軽食チェーン店のワンタン 水餃子に似たものにワンタン(饂飩)があります。北方では「饂飩」の「饂」を「食偏に昆」と書くのが標準とされ、発音は「フントゥン」です。広東では「饂飩」に代えて発音の同じ「雲呑」と書くのが一般的です。「ワンタン」は広東語の発音です。スープの中に挽肉の具が入った小さなワンタンを十個ほど入れ、さっと煮込んで一人前が出来上がり。朝食の定番メニューです。

 現在日本では「饂飩」を「うどん」と読み、小麦粉を練って薄くのばして切った麺を意味しますが、伝来した奈良時代は「唐菓子」でした。その後鎌倉時代にかけて禅宗と共に広まった喫茶の点心として食されますので、「饂飩」は唐から宋代当時の中国のワンタンそのものであり、しかも当時のワンタンにはスープがなかったことが推測されます。又、奈良時代の表記に「混沌」がありますので、当時コントンとオントンの二種類の発音があったことも解ります。

3.混同

 蘇州で朝食を食べようと入った道端の粗末な軽食店。「餃子」があると言います。通常餃子は料理の後の主食ですから不自然に感じながら注文したところ、スープ(中国語で「湯」)が要るかどうか尋ねられました。私は「要」。同行した天津人の営業マンは即座に「不要」。なぜなら北方では沸騰した水でゆでるだけでそれをすくって取り出し、皿に盛って出すものだからです。

 果たして、私の前に出てきたものはワンタンでした。ただ形は餃子に似ていました。華中では餃子とワンタンが混同されています。

4.鍋貼

 焼き餃子に似たものに鍋貼(クオティエ)があります。餃子は皮で具を包むものですが、鍋貼は皮の上に具を載せ、皮の直径にあたる両端を具の上でひっつけただけで両側を閉じていません。餃子は茹でるものであり、鍋貼は焼くことを前提に考案された食べ物です。鍋貼の具には白菜が入らず、豚もしくは羊の挽肉が主体でジューシーではありませんが、焼きたての皮のカリカリした食感が売りです。これも黒酢をつけて食べます。

 餃子が料理の後の主食であるのに対し、鍋貼は軽食、或いはおやつといった感じです。天津では屋台や道端に掛け出した小店で焼いて売っていました。過去形なのは最近は衛生問題からそのような店が原則として禁じられているからです。

5.蒸餃子

広東料理店の蒸餃子 餃子や鍋貼が北方起源であるのに対し、南方の広東では蒸し餃子が生み出されました。飲茶(やむちゃ)店で3,4個ずつ、小さな蒸籠(せいろう)で出されます。種類も豊富で魚介類の具が主役です。小麦粉よりも米粉の透き通った皮が標準で、皮を通して海老の赤、野菜の緑など具の色目も楽しめます。

6.焼き餃子

 日本で餃子が普及したきっかけは、昭和40年代にNHKの「きょうの料理」で元満州貴族の女性が餃子をフライパンで焼いて紹介されたことのようです。それまでは日本人にとって餃子は馴染みのないものでしたから「餃子」イコール「焼き餃子」になったのです。

 旧満州(現在の東北地区と内蒙古北部)には餃子を焼いて食べる習慣があったとも言いますが一般にはほとんど知られていません。そんなマイナーな調理法が日本では主流になったのです。おまけに餃子自体が本来は主食であるにもかかわらず、ラーメンという主食のお供、或いはご飯のおかずとして食べられるようになりました。

 因みに最近は中国の食品スーパーでも冷凍食品の焼き餃子が売られています。パッケージには、こんがり焼けた写真と「煎餃子」(「煎」は鉄板に油を引いて焼く意味)の文字。これは日本向けに輸出しているメーカーが中国市場を狙ったものです。伝来して形を変え、それが本家に逆流しているのです。

この号終わり

写真上:冷凍食品の水餃子450g(約20個)で6元(約100円)
写真中:軽食チェーン店のワンタン
写真下:広東料理店の蒸餃子