立春【酒蔵便りvol.63】

 新年早々訪れた寒波が終わったと思ったら、今月に入るなり再び寒波がやってきました。しかし、晴れ渡る日の太陽は春の力強さを取り戻しつつあります。

出品用大吟醸の発酵もろみ 今年は全国新酒鑑評会に向けて1月に3本の大吟醸を仕込みました。何れか一番良いものを出品します。米を35%まで磨いていますので、吸水も早く、米洗いにも神経を使います。一つ一つの作業を丁寧にこなして仕込み作業を終えますと、次は発酵管理です。

  毎日もろみの泡の立ち具合を見て、櫂を入れてもろみの堅さをつかみ、香りをかぎ、濾液を採取して糖度、酸度、アルコール度数を分析します。1月から2月にかけては、気温が低く安定しますので、厳密な発酵温度管理が要求される大吟醸酒造りには最適です。

<今月の話題> 立春と旧正月

寒さに耐えて咲く椿と二宮金次郎像(中谷家)  2月4日は立春。春が近づいて参りました。中国のカレンダーには旧暦(太陰暦)が併記されており、季節の行事は旧暦を基準とします。中国のみならず、日本以外の東アジア、東南アジアでは正月は旧暦で祝います。今年の旧暦1月1日は、2月14日です。即ち、旧暦では立春が12月に来てしまい、新年には立春がありません。迷信で、「立春(春)のない年は結婚に不向き」と言う人がいますがどうでしょうか。

 一年は12ヶ月ですが、この「月」は新月から月が満ちて満月になり、欠けていって新月に戻る周期を数える単位に他なりません。この周期は約29.5日です。29日の小の月が6回、30日の大の月が6回、合計354日で一年です。

  一方太陽の運行は365.2425日ですから約11日足りません。これを繰り返しますと季節と月がずれていきますので、約3年に一度、一年を13ヶ月にして調整します。増えた月を閏月(うるうづき)と言います。2009年には5月の後に閏5月が入り、13ヶ月になりました。これが原因で、今年の旧正月は遅くなりました。

 立春は二十四節気の一つで、正確に季節を知る為の工夫です。春分を起点として太陽の運行を基に一年を24等分して名前を付けたものが二十四節気です。太陽の運行を基準にしていますので、太陽暦での日付は毎年2月4日頃と決まっています。従って、旧正月が遅くなった年は、立春の後になるのです。

  旧暦では、二十四節気の雨水(うすい。雪が雨に変わる頃)を含む月を1月とします。旧暦1月は30日あり、この30日の何れかに雨水が含まれます。雨水は立春の15日後ですから、雨水が1月16日以降であれば立春が1月に含まれます。その確率を大ざっぱに計算すれば30分の15、即ち二分の一です。ということで、結婚を延期するまでのことはなさそうです。

写真上:出品用大吟醸の発酵もろみ
写真下:寒さに耐えて咲く椿と二宮金次郎像(中谷家)

2010年2月
中谷酒造(株)代表取締役  中谷正人