VOL.45 固有名詞はどう読むか?

投稿日:2000年3月06日

固有名詞はどう読むか?

1.「なんでそんなに漢字がうまいんや」

 私が書く字をのぞき込みながら中国人が感心しています。中国の人々は意外に日本人が漢字を使うことを知りません。更に、自分たちが多くの日本語を使っていることも。例えば「電話」「交通」「道路」「博物館」「動物園」等々。

2.明治初期

 西欧の国々に追いつくために、それらの政治、経済、科学、文化を導入しました。その時、西欧の言葉を何とか日本語に翻訳しなければなりません。漢字を使って多くの訳語が作られていきました。例えば政治であれば、国家、憲法体制、議会、主義、社会、法律等々の言葉は概ねその頃に作られたものです。

3.丁度その頃

 中国では清朝末期、明治維新を成し遂げた日本に倣って近代国家建設を夢見る多くの若者が日本に留学しました。彼らがそれら漢字に直された西欧の知識を中国に持ち帰ったのです。ですから、これらの単語は日本語と共通しています。かつて日本が受け継いだ漢字が中国の近代化に貢献したのです。

 余談ですが、学生時代に中国の法律雑誌を読みましたが単語とその概念が共通しているおかげで容易に理解できました。中国語の文法は非常に簡単、主語・動詞・目的語という順に並んでおり活用や語尾変化もなし、冠詞の類もなしということで、ちょっと手ほどきを受ければ読むことができるのです。

4.ところが

 生活に密着した言葉は、日本語との差が大きく簡単にはいきません。例えば、「」はベッド、「丈夫」は亭主の意味です。こちらは他の外国語同様、一つ一つの学習の積み重ねが必要です。私の場合、新聞の政治・経済記事の大意を取ったり商談をすることには特段の不自由は感じませんが、小説となると知らない単語だらけでお手上げです。

5.四声(しせい)

 中国語学習の最大の難関は、発音です。学習経験のある方は御存知でしょうが、同じ発音に最高4つまでのアクセントの種類があり、それぞれに違う漢字が当てはまるのです。このアクセントは四声と言い、第一から第四まで番号で呼ばれます。

 例えばカイ(kai)という発音の場合、第一声は「開」、第三声だと幾つもありますが、日本人に馴染みある漢字ですと「慨」、「楷」、「凱」です。同様にカン(kan)は、第一声が「刊」、第四声が「看」です。カイ(gai)なら第一声「該」、第三声「改」、第四声「蓋」といったところでしょうか。

6.有気音と無気音

 賢明な皆さんは、同じカイkaigaiの二種類があることに気付かれたはずです。

 中国語には、清音と濁音の区別はありません。その代わり発声時に息が出るか(この場合、)出ないか()で区別しているのです。口の前に細く切ったティッシュペーパーを指でつまんで垂らし、息で動くか動かないかで発声練習をされた方もおられるはずです。日本語で言えば、「卓球」のタは息が出ますので有気音(t)です。「タバコ」のタは無気音(d)です。

 「炊く」と「抱く」、或いは「脱ぐ」と「抜く」は何れも息の出ない無気音、中国の人にとっては同じに聞こえます。場合によってはあぶない間違いになりかねません。このように中国語は、発音での区別が微妙である点が最大の特徴となっています。

7.文字統一の意義

 中国は広く、多くの方言が存在します。意思疎通をはかる上で文字を共通化する事は不可欠でした。それが最初の統一王朝秦以来の漢字文化の原点とも言えます。あなたの名前も北京では北京音で読まれ、上海では上海音、広州では広東音で読まれます。

 音よりも文字が主ですから日本に於いても中国の固有名詞は日本語の音読みをするのが理にかなっています。中国音を真似してカタカナ表記すれば四声及び有気音・無気音の区別が不明ですので、中国人にさえ何という字を意味するのか解らないのです。

 一方、漢字を使わない国々では、通じないことを承知の上で現地音を自国の表記の範囲内で表すことになります。

 近年、韓国の方々が韓国音でのカタカナ表記を求める(例えば金大中をキムデジュン)ことも多いようですが、その影響か中国のスポーツ選手の名前もカタカナ表記されることがあります。

 同じく漢字を使う文化、原点に戻って考えてみたいものです。

つづく