和食の真髄 vol.111

投稿日:2014年3月07日

<蔵の様子>

3月4日、庭の梅

 3月3日、庭の梅が開花しました。桜の代表とも言える染井吉野より少し濃いピンクの花びらです。太陽の光は力を取り戻し、明るく花を照らします。芝生もほんの少し緑の葉を出し始めました。いよいよ春の訪れです。

 1月に仕込(原料を投入し攪拌する作業)を終えた大吟醸酒のもろみは先月中旬から順次搾り始め、今月上旬で5本目のタンクのもろみを搾り終えました。これらの内から一番良いものを選んで全国新酒鑑評会に出品します。審査は6月ですからそれまでの熟成管理が重要です。気の抜けないところです。

 一連の大吟醸の仕込が終わった後は、純米酒の仕込が続いています。全ての仕込作業が終わるのは今月末。それらのもろみを搾り終えるのは4月末。今シーズンの酒造りも先が見えてきました。

<今月の話題> 和食の真髄

 昨年12月、和食(日本の伝統的な食文化)がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。和食、或いは日本食は世界に広まっていますが、それを代表する寿司、天麩羅、すき焼き、しゃぶしゃぶが完成した時期を見てみましょう。

 これらの中で一番古いのが天麩羅。油で揚げるという文化が16世紀にポルトガルから伝わり、江戸時代(17〜19世紀)に今の形になります。

 握り寿司は19世紀前半に江戸で始まりました。

 すき焼きは明治時代(19世紀後半)に牛肉を食べる習慣が欧米から伝わってからです。

 しゃぶしゃぶに至っては、第2次世界大戦の後、中国の羊のしゃぶしゃぶの羊肉を牛肉に置き替えて日本料理の仲間入りをしたものです。

 今日、家庭料理の煮物の味付けに醤油は欠かせませんが、醤油が普及したのは19世紀のことです。おでんも濃口醤油が普及してからできたものです。天麩羅は塩を付けて食べもしますが、江戸では醤油あるいはつゆに付けて食べるようになって普及しました。つゆも醤油がベースです。握り寿司も醤油を付けます。我々がイメージする和食が今の形になったのは意外なほど新しいのです。

 和食は長い年月をかけて育まれてきました。今日一般的に人気のある各々の料理が完成した時期は古くはないとしても、伝統的に和食を支えてきた特長、或いは世界の他の料理と一線を画する核となる要素は脈々と受け継がれてきました。

 日本は四季が明確です。海の幸、川の幸、山の幸にも恵まれてきました。季節感と、季節の素材の味を生かす工夫が日本料理の真髄と言えそうです。

 現代は食の国際化が進んでいます。和食の季節感と季節の素材を生かす工夫がフランス料理はじめ世界各地の料理に影響を与えています。これがユネスコの世界無形文化遺産登録に繋がったものと私は考えています。

写真:3月4日、庭の梅