謹賀新年 温度とお酒の楽しみ vol.26

投稿日:2007年1月19日

<酒蔵の様子>

酒蔵の松尾大社神棚

 新年は、4日から酒造りの作業が始まりました。本醸造酒の麹作りと酒母作りからです。

 もろみ(仕込み作業終了後の発酵中の液体)管理も重要です。特に、出品用大吟醸と純米大吟醸は細やかな心配りが必要です。

 発酵状態を管理する為に、毎日全てのもろみの分析を行います。温度、糖度、酸度、アルコール度数。そして香り、泡立ちなどの外観で発酵の情況をつかみます。

発酵中の純米大吟醸のもろみ

 年末から正月にかけては蔵人も休みを頂きます。その間、何日か分析を休みましたが管理は確実に行いました。大切な大吟醸と純米大吟醸のもろみ温度は正月三が日を終えるまで、正確に10℃から11℃の間で維持することができました。

 正月明けの4日からは通常通り毎日の分析を行いました。全てのもろみの発酵は正常です。

写真上:酒蔵の松尾大社神棚
写真下:発酵中の純米大吟醸のもろみ

<今月のテーマ>

 今月は燗酒(かんざけ)についてお話しさせていただきましょう。

 酒を飲むと暖まります。冬場は、暖かい酒で温もる習慣は世界各地にあります。アイリッシュコーヒー、暖めたワイン、お隣りの中国では古来紹興酒を暖めて飲む習慣が定着していました。

 日本でも冬は酒を暖めて飲むようになり、酒が嗜好品として庶民のものになった室町時代以降、料飲店のサービスの一環として燗酒を客に供するようになりました。

 過剰サービスかどうか、やがて夏でも客の要望があれば酒に燗を付けるようになり、年間を通じて燗酒を飲む習慣が定着しました。戦後は、酒といえば燗酒を飲むようになり、清酒は「おっさんの酒」として若者には好まれない時代を迎えます。

 清酒離れが進んだ近年、燗酒を見直す動きが始まっています。安酒を燗酒として提供していたのでは、飲む人が減っていくことに気づき、一昨年あたりからちょっと良い酒、特に本醸造酒や純米酒を客に銘柄と酒質が解るように提示し、客の選択した酒を客の好みの温度で提供する店も増えています。

 この流れは我々清酒造りに関わる者にも嬉しいのですが、発酵食品たる清酒が持つ血圧を下げて体温を2時間も維持する効能や、血糖値を下げる効果、美肌に役立つことなど、焼酎やワイン、ビールにはない健康効果を国民全体で享受できる点でも嬉しいものです。

 おでん屋などで見ていますと、熱燗(あつかん)という言葉が燗酒の代名詞です。熱燗は徳利を手で持ちにくい、大体60℃を越えた温度です。これではせっかくの酒の風味が傷んでしまいます。清酒は醸造酒ですからデリケートです。

 やはり燗を付けるなら50~55℃程度が好ましいのです。少し熱いながらも徳利を手で持てる温度、酒を味わいながら喉を素直に越えていく温度、これを上燗(じょうかん)と言います。魚の刺身など冷たい肴(さかな)で飲む場合や寒い時期に温まるには最高です。

 徳利を手で持って心地よい暖かさがぬる燗です。温度は約45℃、酒の風味が料理を引き立て、相乗効果が最も楽しめます。少し冷めた上燗もこれにあたります。

 酒好きは「人肌の燗」などという風流な言い方をします。これは酒の味を最高に生かした燗酒です。温度は体温よりやや高い40℃くらい、ほんのりと暖かく、料理との相性も素直です。

 ところで、燗酒と酒を冷やして飲む冷酒(れいしゅ)との間にひやという飲み方もあります。ひやとは常温で飲むことを言いますから、これが本来最も標準的な飲み方でした。

 手の掛からない飲み方ですから、例えば「冷や酒をあおる」という風に表現されたりもします。冬は冷たく、夏はぬるく、あまり感動がない飲み方ではありますが、酒の性格も如実に現れます。ひやで酒の味と質に迫ってみるのも悪くありません。

 酒は百薬の長。今年も健康の為に、適量の清酒を召し上がっていただくことをお勧めします。本年も宜しくお願い申し上げます。